藤田麻衣子インタビュー

ゲーム『緋色の欠片』シリーズの主題歌などで知られるシンガーソングライター、藤田麻衣子。ピアノの弾き語りをベースに、「歌」の魅力をシンプルに提示する彼女の音楽は今、女性を中心にファンを拡大しているという。そんな彼女が歌う歌詞のほとんどは、ときに切なく、ときに暖かい恋の物語だ。それはあたかも一編の小説のように、心へするりと入り込む。そう、彼女はシンガーであると同時に、その透き通った歌声で物語を綴るストーリーテラーなのである。そんな彼女にインタビュー。秋に発売されるセカンドアルバムのことなどについて訊いた。
*誌面に掲載できなかった、インタビュー完全版を掲載!
取材・文:前川 誠
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物語を歌う

──ブログやライブのMCを拝見するに、藤田さんは「言いたいこと」が日常的に溢れている方なのかな、という印象を受けたのですが。
 そうですね。私は「一日に喋りたい量」が決まっているみたいで、例えば事務所に来てスタッフと沢山喋ったりするとすごくスッキリするんです。そこでもし議論があったらブログにも書きたいし。静かな日があるとイライラしてケンカを売るくらい、騒がしい毎日を過ごしてます(笑)。
──しかもスタッフに伺ったところ普段は単に「お喋り」というだけではなく、「議論」や「ぶつかり合い」などといった類のコミュニケーションが多いそうで。
 ケンカしたい訳じゃないんですけど、オブラートに包んだやりとりが好きじゃないんです。言いたいことがあるなら、遠回しに言っている時間がもったいないからハッキリ言いたい。ハッキリしたらスッキリする。……単純にスッキリしたいだけですね(笑)。
──昔からそうなんですか?
 昔からもちろん喋っていたとは思うし言いたいこともあったんですけど、どちらかと言うと控えめな方だったと思います。でも年齢を重ねるごとに喋る量が増えていって、社会人になった頃には意志が強くなって、おまけに音楽の道を選んじゃって。アーティストとして生活を始めてからはもう、ワガママ放題かもしれない(笑)。
 でも今は、心のどこかで「自分が先頭にいなきゃ」という思いがあるんです。スタッフとかバックバンドの方とか、関わる人が増えるほどいろんな意見が出て来るじゃないですか。そこで自分が変わらないで真っすぐ進むためには、イヤな意見は弾かなくちゃいけない。地元の名古屋にいたときからそう思っていたし、東京で独りになって、アーティストとしてやっていくと決まってからは、尚更そう思います。
 だって、どんなに味方だと思っていた人も、ぶつかり合うことはあるじゃないですか。スタッフだってみんな仲間だけど、急に自分の歌に対して反対意見を出されることもある。そうすると急に、皆が敵に見えてくるんです。「なにぃ〜!」って(笑)。そこで「良い子」だとその人の意見を聞いてしまうかも知れないけど、もしそれで結果が出なかったら結局責任を取るのは自分自身なんですよね。それなら、自分の意見を通して結果が出なかった方が納得できる。そういう意味で、自分はまず先頭を走って、それに「着いて来てくれる人、来て!」っていう(笑)。どんどんワガママになってますね、最近。
──なるほど(笑)。ただ、それだけ「言いたいこと」が溢れているのに、解り易い意味での「メッセージソング」を発信している訳ではないですよね。そこが、藤田さんのユニークなところだと思うんです。
 10曲に1曲くらいは「メッセージソング」もあるんですけど、なんか照れるというか、しっくり来ないんです。それよりも物語として歌えば、どれだけ感情移入して、泣きそうになりながら歌ったとしても恥ずかしくない。
 それに私は押し付けがましい歌は歌いたくないんです。「こうしなさい」なんて断言するより、「こういう物語があります」と提示すれば、それに共感しない人もひとつのドラマとして楽しめるし。別に万人受けを狙っている訳じゃないけど、歌の世界としては、物語があった方が単純に好きなんです。
──しかも藤田さんの歌詞はひとつの短編として成立するくらい、完成されたものです。やはり歌詞には気を遣っていますか?
 そうですね。私はいつも、歌詞から楽曲を作るんです。逆に、曲をたくさん作ってから「じゃあ今回はこれにしよう」みたいな作り方はしたくない。思いついた感情を書き連ねるときもあるんですけど、最終的にはそこから「じゃあどんな物語を作ろうか」って考えちゃう。だから歌詞が降りて来ないと全然(曲を)作れないし、できる時はいくつもできるんですよ。
 今のマネージャーは歌詞に対して、いろんなアドバイスをくれるんですね。それがすごく的確で、だからこそ「どうしよう」って悩んでいたときもあったんですけど、そんな時に本屋さんで槇原敬之さんの本を見つけたんです。槇原さんが今まで書いた180曲くらいの歌が載っている本なんですけど、どの歌詞も起承転結がしっかりしていて、全曲すごくクオリティーが高いんです。それを読んでコツを掴んだというか、「こういう風にすれば良いんだ」ということが解って、歌詞を書くことがすごく楽しくなった。それが今の作品に繋がっているのかもしれないですね。
 スタッフとかからは、物語ばかりじゃなくてもっとぶつかって来るものが良いって言われることもあるんですけど、でも私は、やっぱり物語を書きたいんです。
──そういった意味で藤田さんは、音楽という媒体を使って作品を発表している小説家、という分類が一番ハマっているかもしれないですね。
 出版社の方から小説を書きませんかって誘われたことはあります。
──やっぱり(笑)。
 でも、まだ全然書けないですね。今小説を書くなら、その分歌詞を書きたいから。

止まりたくない

 私、世間に溢れているいわゆる「ポップス」とは違う場所にいたいんです。もちろんジャンルで括ればポップスな訳で、そこはどう思われても良いんですけど、自分は自分のジャンルがあると思っているし、周りから今こういうものが流行っているとか言われても関係ない。純粋に私の歌を良いと思ってくれる人が集まってくれれば、それで世界は広がると思います。もちろん100%趣味に走って結果が出なくてもダメなんですけど、そこの狭間を走って行きたいですね。自分のやりたいことを貫きながらどこまで結果を出せるか。今、自分を取り巻く環境も良いから、やれると思います。
──デビューマキシを発売したのが2006年9月で、そこから今に至るまで、すごい速度で状況が変化していますよね。そこに対して戸惑いは感じませんか?
 すごくありました。デビューした時は1人ですごい速度で走りまくっていたから「私、早く死んじゃうんじゃないか」って思ったし(笑)。今も数ヶ月に1回は「怖い時期」がやって来ますよ。ちょっと急いでるくらいが一番調子良いんですけど、パタッと急にやることがなくすると、体調がおかしくなって病院に行ったりします。……だいたい「食べ過ぎです」なんて言われて終わりなんですけど(笑)。
 デビューした1年半前くらいはブログでも「耳鳴りが……」とか書いていたと思う。歯科衛生士として上京してすぐは週休2日で働いて、家に帰ったら作曲して、嬉しいから朝まで聴いて、週末はライブだから夜行バスで名古屋に行って……という毎日だったんです。そうやってフルで活動してたから休日がなくて、でもそれで全然よくって、「休日って何するの?」みたいな感じだったんですけど、1年くらい前に今の事務所に所属することになって仕事を辞めたら、ピタッとやることがなくなったんです。明日も明後日も予定がない。「私、何をすれば良いんだろう」って。
 でも皆に相談しても愚痴にしかならないし、「やりたいことやっているんだから良いじゃない」って羨ましがられるだけだから誰にも話せなくて……。すごく精神的に追いつめられたし、あの頃が一番病んでたかもしれないですね(笑)。1週間くらい地元に帰ってとにかく友達と遊びまくって、緑を見たりしていたら結構楽になったんですけど。そういう感じでバランスが取れない、っていうのはあるかもしれないです。

『二人の彼』

──今回アルバム収録曲を作るにあたって、ファンの期待に対するプレッシャーはありませんでしたか?
 考えたことなかったですね(笑)。ヘンな話ですけど、ファンの人を信頼しているんですよ。今は媒体への露出が少ない分、私の音楽を好きでいてくれるのは本当に聴きたくて聴いてくれている人ばかりなんですね。街に溢れているからとか話題だからっていう理由で聴いている人が少ないから、何か1つの曲が好きというよりは、「藤田麻衣子の作る音楽」を好きでいてくれるのを、ファンの方からの声で感じています。だから次のアルバムを出したら、きっとそれも聴いてくれるんだろうなと。それは安心感というか、信頼感ですよね。その代わり絶対に期待は裏切らないようにしますけど。
──セカンドアルバムはどんなものになりましたか?
 1枚目のアルバムは基本的に私の恋愛観が強く出たんですけど、どの曲も誰かに「会いたがって」いるから『会いたい』ってタイトルを付けたんです。
 そして今度のアルバムは『二人の彼』っていうタイトルなんです。これは1年くらい前に友達と居酒屋で「ねえねえ、『二人の彼』っていう曲があったら面白くない?」「それ、ひどいね(笑)」「じゃあ今日書くわ」と喋ったその夜に書いた曲で(笑)、ライブで演奏するとかなり反応が分かれるんですよ。文字通り「二人の彼」に惹かれる女の子の話なんですけど、女性は「解る!」って言ってくれるし、男性は「ちょっとどうかと思うよ」って。でも、そんなに反応がハッキリ分かれるのってすごく珍しいことだから、私はこの曲をアルバムタイトルにしたかったんです。スタッフからは止められたんですけど、「これが良い!」と通して決定しました(笑)。
 その他にも片想いとか、諦めるしかなかったりとか、ちょっと年齢層が上がった、切ない曲が多いですね。私は今24歳なんですけど、それくらいの女の子ってこういう恋愛もあるよね、っていうところを表現できたと思います。本当はもっとドロドロなものもあったんですけど、それはまだ作品にはしませんでした。まだ早いかなと(笑)。今まで余りシングルを出してないんですけど、このアルバムには「これはシングルにしたい」と思った曲がいっぱい入ってます。だからすごく聴き応えがあると思います。


【INFORMATION】

●イベント開催決定!!
2008年10月18日(土)
「藤田麻衣子ワンマントーク&ライブ」
会場:ロフトプラスワン(新宿・歌舞伎町)
18:00開場/19:00開演
前売2,500円/当日3,000円(共に飲食代別)
司会:前川誠(ルーフトップ★ギャラクシー)
遂にセカンドアルバムを完成させた藤田麻衣子の単独イベント!ライブのMCでは語りきれないあんな話やこんな話、そしてもちろんアルバムのことなど、濃〜いトークがてんこ盛り!もちろん弾き語りのライブもアリます!ご飯を食べながらゆっくりと、藤田麻衣子の世界をご堪能ください。
*チケット販売方法など詳細については後日発表いたします

●セカンドアルバム『二人の彼』
今秋発売決定!!

藤田麻衣子オフィシャルサイト
http://www.fujitamaiko.com/

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