面影ラッキーホール

待望のニューアルバムは期待以上に不謹慎!
「あたしゆうべHしないで寝ちゃってごめんね」という曲名が示すように、面影ラッキーホール(面ラホ)は男と女のどうしようもない生態を鋭く、でもどこか暖かく描き出す。物語の主役は、シャブ中、ヒモ、風俗嬢、三多摩系ヤンキー、そして、あなただ。今年、9年振りにリリースされたアルバムについて、リーダーのSinneryang(シナヤン)と、ボーカリストのaCKy(アッキー)に訊いた。
※誌面とは別バージョンのインタビューを掲載!


0812hito_o.jpg時にはじじいのセックスのように

──今回のアルバムにはヒップホップな曲が入っていませんが、これは何故?
aCKy あれは歌詞の量が増えたからヒップホップにするしかなかっただけで、特にラップをしたかったって訳じゃないんですよ。もちろんヒップホップに失礼だから死ぬほど聴いていたし好きだったりもしたけど、やっぱり普通の人はカラオケとかでラップするの難しいし(笑)。まあ今回歌謡曲が増えたのは、歳月の流れじゃないですかね。
Sinneryang 肩の力が抜けてきたんだよね。好きなものを好きと言える気持ち、抱きしめていたい、って思えるようになった(笑)。
──なるほど(笑)。あと、ジャケットのテイストも前作までとガラッと変わりましたね。今までは石井隆やケン月影、上村一夫の漫画を使用していましたが。
Sinneryang なんかね、レーベルに言わせると僕たちオシャレなバンドらしいんですよ(笑)。僕らは完全に受注発注だから、今まではああいうものが求められてると思っていたからああしてた。でも今は多少オシャレなものが良いんだと思ったので。
aCKy 東京で一番オシャレなバンドと言えば、DCPRGかウチですからね(笑)。だってこのジャケ、トラットリアっぽいでしょ。
Sinneryang まあ、間口を広げたってことですよ。本当はバンド名も変えたいんです。この所為でかなりハードルが上がってしまっている面もあるから。でも、変えるのも面倒じゃないですか。デカいTVスポットとかが決まればすぐ変えるけど、そんなこともないし。
aCKy 携帯の番号変えるのと一緒だよね。今ちょっとは知られてるし、もしかしたらあの娘から電話かかってくるかもしれないし、みたいな。
Sinneryang なので今後はジャケにある「O.L.H.」っていう表記で行けたら良いんじゃないかなって。
aCKy YMOみたいな。
Sinneryang そこはやっぱり、TVスポットですよね。結局。
──これまでも常にタイアップ狙いですもんね(笑)。ちなみにTVの話で言えば「私が車椅子になっても」は、最近ケータイ小説などで人気の“恋人が難病”系のストーリーに対するアンチテーゼとして聴いたら、すごく面白かったんですよ。
Sinneryang それは素晴らしいし、ありがたいですね。作品って、そうやって作者の意図から離れて聴かれるべきですから。
──パートナーの病気に対する反応って、やはり万人がドラマのようにいかないものだと思うんです。
Sinneryang 難病って言ってもね、それが象皮病とかだったらTV的な甘いストーリーとして成立しない訳だから。
──やはりこの曲もリサーチはされたんですか?
Sinneryang これはリサーチっていうより、子供の頃から自問自答してたことですよ。誰しも考えるじゃないですか、彼女の腕がなくなったら自分はどうするんだろうとか。……まあ、歯が無いのは良いですけどね(笑)。
aCKy わざとする人もいるくらいだから(笑)。
──着脱可能な人とかも(笑)。
aCKy ……いやあ4、5年前はこんな話ばっかしてたんだけど、最近すっかり丸くなりましたね。
──丸くなったと言えば、今回のアルバムではだいぶ表現が丸くなりましたよね。
aCKy じじいのセックスみたいなもんですよね。力は無いけど技はあるみたいな(笑)。前はもうちょっと「ぶつかっても良いや」くらいの気持ちで投げてたんだけど、今は内角高めのギリギリが投げられるようになったんですよ。
──そこの推敲は結構されるんですか?
aCKy 生半可なものじゃSinneryangからOKが出ないんで。「これもうちょっとかな」と思って出すと、大体ダメだって言われる。
Sinneryang さっき言ったように、作者の意図を離れたところでちゃんと違う意味として成立するかっていう基準で判断してますから。だって、曲自体がロクでもないですからね。
──そんなことないですよ。
Sinneryang いやいや、そこはしっかり自覚してます。それに僕ら謙虚なんでね。ミュージシャンがよく「僕たちはアーティストだから」って言うけど、そんなの僕らにとってはちゃんちゃらおかしい訳ですよ。


時代よ、俺に続け

──歌詞を推敲するにあたって、いわゆる「放送禁止用語」的なものに気をつけたりもしますか?
Sinneryang そこは元々ないんです。いっつもそういうことばかり言ってるって思われがちですけど、実は曲中で「ちんぽ」って言ったのも今回が初めて(「あの男~」)で、しかもボコーダーをかけてるから余り分からないし。
aCKy いつもちんことかまんこって言ってるように思われるのが、素敵でしょ? そんなこと言ってないのに。
Sinneryang 言ってしまうのは逃げだと思うんですよ。それは昔ね、萩本欽一がいかりや長介に言ってました。
──いかに「ちんこ」と言わずに「ちんこ」を表現するか。
Sinneryang っていうところにしか意味がないんじゃないですかね。僕らに限らず。
──聴き手に委ねるという意味では「コレがコレなもんで」のように、ライブで見ないと半分くらいしか意味が分からない曲もあります。
Sinneryang あれはライブ用に流して作ってますから(笑)。って、それを言っちゃおしまいなんだけど。
──ジャケットでは身も蓋もない英訳がされてますけど。
aCKy そう、それは結構今回のチャレンジなんですよ。ダブルミーニングだったり作者の意図が見えにくかったりするところを、多少明かしてみたんです。今までよりもうちょっと丁寧に提示したかったんですよ。「いっちまったら」とかね。
Sinneryang まあでも、普通の人は読まないでしょ。ここまで読むのは、本当数パーセントの人ですよ。
aCKy でも、その数パーセントの人のためには頑張ってます。そこは絶対に手を抜きたくない。マニアックなリスナーとしては、そこも楽しみだったりするじゃないですか。
──さて、今回は作曲を外注したりもされているようですが。
Sinneryang さっきも言ったように肩の力が抜けてきて、何もかも自分たちでやらなきゃっていう気負いすらなくなってきたんですよ。
──そういったことも含めて、制作にあたって今の時代性を考えたりはしましたか?
aCKy 実は前にアルバムを3枚出したとき、時代の空気をすくえなかったっていう敗北感があるんですよ(しみじみと)。
Sinneryang お前、何言ってんだよ(爆笑)。
aCKy なんだろう、ちょっと時代より先に行っちゃった? みたいな(笑)。アジャストを間違えた、的な。それで本気出したらまた10年先に行っちゃうから、今回は敢えて10年前と同じ気分のままでやりました。普段思っているようなハイパーな気持ちをグッと押さえてね。
Sinneryang 前のアルバムを発売した頃は、僕たちこれからどうなるか分からなかった訳じゃないですか。メジャーでも出していた訳だし、もしかしたらまかり間違って売れちゃうかもしれなかった。今そういった意味では、自分たちがどのお客さんを相手にしていて、どのマーケットにどれくらいの規模で行けば良いかが分かってしまってる。だから今回は、これくらいの湯加減なのかなっていうところでやった。そういう意味で、今一番やりたいことややりたい音楽にジャストではない、ってことですよね。だから世の中の時代性っていうより、自分たちの時代の中のどこを拡大再生産してやれば良いのかっていうことは考えてます。
──あと三多摩というか、東京郊外のテイストが減ってきましたよね。
aCKy まあ、サバーバンからアーバンへ移行したというか。何せオシャレなバンドですから。今後はもっとトラットリアな気分でやって行きますよ。
(取材・文 前川誠)


【プロフィール】
おもかげらっきーほーる
1994年結成。'96年1stアルバム『メロ』、97年メジャーデビューアルバム『代理母』、'99年アルバム『音楽ぎらい』をリリース。その後活動のペースが落ちたが、'07年にDVD付きシングル『パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏』をリリースし、フジロックなどにも出演した。平均年齢上昇につき、現在若いメンバー募集中。パートは「何でもいい」とのこと。
■オフィシャルサイト
http://omokageluckyhole.com/


【インフォメーション】
0812hito_o_j.jpg絶好調発売中
『Whydunit?』
PCD-28005 2,940yen(税込)
1. あの男は量が多かった
2. いっちまったら
3. 私が車椅子になっても
4. あたしゆうべHしないで寝ちゃってごめんね
5. パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏
6. 中に出していいよ、中に出してもいいよ
7. コレがコレなもんで
8. おみそしるあっためてのみなね


【ライブ】
1/18 心斎橋CLUB QUATTRO
special guest:大西ユカリと新世界
1/25 渋谷CLUB QUATTRO
詳細は http://smash-jpn.com/ にて

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