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感動の実話「キャベツのヘリコプター」

上野〜五反田。20年前、東京の裏通りをひっそりと歩き、そしていなくなった1人の中年オカマの物語


 狂騒の80年代も終わりに差しかかったある秋の日、坂本(仮名)は上野の街角で1人の中年男性を助けた。部下たちと街を歩いていたところ、ハゲた中年が屈強な若者たちに囲まれているのを目にし、義侠心を起こして助けに入ったのだ。あえなく返り討ちにされてしまったのだが、どうにか中年は助かり、お礼にとある居酒屋へと連れて行かれた。
 店に入って杯を傾け始めると、中年男性は坂本に向かって身の上話を始めた。
 「あたしの名前はキャベツ。上野のここらへんはあたしのナワバリなの。子供の頃は横須賀にいたんだけど、戦後すぐだったし、とにかく貧乏でね。米兵に入れられて裂けたこともあったな……」
 彼が同性愛者だったことに驚きつつ、坂本は「この辺がナワバリなら今日のようなことがあるハズないのに……」と思ったと言う。
 そして1時間ほど経った頃。キャベツは「ねえ、ヘリコプターって知ってる?」と言うと、目の前にあったおしぼりを筒状に丸め始めた。そして筒の真ん中を片手で握ると、もう片方の手のひらを筒の先に当て、やさしく回し始めたのだ。
 「助けてくれたお礼に、やってあげようか?」
 即座に断ると、キャベツは困った顔をして「そっか……」とだけつぶやいた。坂本は言う。
 「きっと、キャベツが唯一できるお礼が、長いオカマ生活で培ったヘリコプターだったんだな。その後1時間くらい飲んで店を出たんだけど、なぜか恩人のハズの俺が会計したし。……まあ、ハゲの中年にヤられたくない技だけど(笑)」
 坂本たちが会計を済ませた後もキャベツは店に残った。広いテーブルに1人残されたキャベツは、どことなく寂しそうだったと言う。
 それから数ヶ月が経った頃、坂本はゲイバー好きの女性から意外な事を聞かされる。なんと、キャベツという名前の同性愛者が「トマト」という小さな店を五反田に開いたというのだ。だが、そのネーミングに苦笑したものの、坂本がキャベツと再会することはなかった。その後すぐ店が火事で焼けてしまったのである。
 少年の頃、米兵の太い一物のせいで肛門から血を流し、流れ着いた上野ではうだつがあがらず、恩人にお礼をひとつ返すこともできなかった……。そんなキャベツが、ようやく開いた念願の店だった。だがその店も数ヶ月で焼きトマトになり、その後誰も彼の行方を知らないと言う。もし今生きているとしたら80歳を超えているであろう彼は、何を思い、何を考えて、昭和の激動を渡ってきたのか。世の偉人と比べるまでもなく、余りにもちっぽけな存在のキャベツ。だがそこには、ただちっぽけだと掃き捨てることのできない“何か”がある。ギャラクシー編集部では、そんなキャベツの行方を探しています。'87年頃に上野で働き、その後五反田で「トマト」という店を出したキャベツという名の中年(当時)男性をご存知の方は、編集部までご一報を。彼の物語はきっと、様々な人に聞かれるべき物語だと、私たちは信じています。(文中敬称略/前川誠)

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▲夜の五反田駅前。キャベツの夢は、ここで灰になった。

キャベツに関する情報をご存知の方は、FAX(03-5287-9177)かメール(galaxy@loft-prj.co.jp)にて。すべてギャラクシー編集部・キャベツ係宛。

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コメント (2)

匿名:

キャベツさんは東五反田にいらっしゃいますよ。

コメントありがとうございます! 詳しいお話を伺いたいのですが、ギャラクシーメール(galaxy@loft-prj.co.jp)までご連絡頂けないでしょうか? どうぞよろしくお願い致します。

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